第59章 動き出したお年寄り達
それにしても
俺は人から良く
『人との距離の詰め方が上手いよね』
って言われる事が多いんだけどさ
どちらかっていうと
気難しい吉井さんが(ごめんなさい吉井さん)
凄い大野さんとは
打ち解けてんなぁって
感じてんだよね
智「昨日二宮くん休みだったじゃん。俺は違う職員さんに付いて実習してた訳ですよ。その時にね。吉井さんやお年寄り達にお話を伺うにも、自分の素性を明かさないで……なんてあり得ないって思ったし。目的を 伝えた上で本気でぶつからなきゃさ、思いを伝えては下さらないって思ったんだよ」
吉井「これ、か、らの……こと……も、き、いた」
すげぇな大野さん……色々動いて……
俺は? 何をしたんだろう?
和也「うっ」
泣きたくなんかないのに
勝手に涙が溢れそうになって来て
吉井「どした?」
和也「吉井さん…… 俺 ……何してきたんでしょうね? 翔ちゃんを命の危険に晒して、るなちゃんを病気になるまで追い詰めて…… 助けてあげられなかった」
吉井「ち、がう! かずなり、く、んが、しょうちゃ、ん、るなち、ゃんを、ま、もって、わしら、の、こと、もまもっ、てく……れた、から、た、たか、う……こと、に、したん、だ」
和也「吉井さん……」
智「 間違いなく、施設側に負ける事なく翔ちゃんとるなちゃん。入居者さん達を守って施設側を話し合いのテーブルに着かせたのは二宮くん。キミだよ? 吉井さんは二宮くんの事を『 女の子を命懸けで守る男の中の男だ』って褒めてたんだよ。ですよね? 吉井さん? 」
吉井「ああ……が、んば、ったな」
智side
『頑張ったな 』
これほどの褒め言葉はないよね
嬉し涙かな?
ちょっと涙ぐんでいる二宮くん
二宮くんは翔ちゃんとるなちゃんが
勤め始める1年前から働いて
2年間も
この摩訶不思議な
施設の職員達と戦ってきたんだもん
本当に頑張ったよね
和也「吉井さん負けませんよね」
吉井「ま、けな……い」
智「皆で勝ちましょう」
オイラ達
誓いを新たにした時にさ
吉井さんが……