第59章 動き出したお年寄り達
介護施設 PM14:00
和也 side
和也「吉井さん、ここで油売ってて良いの?」
吉井 「こ、こで、おしぼり、た、たんで……るじゃ、ない……か」
和也「そうなんだけどさ」
俺は今日は早番勤務 (06:30~15:30)で
見守りが特に必要なお年寄り8人が
昼夜過ごす部屋《見守り室》の担当をしていた
吉井さんは、右方半身麻痺がおありなんだけど
杖や、車椅子で移動されたりとされるから
他の入居者様達《30名》と
デイルームで日中は過ごされているんだけどね
今の時間は入浴の時間だけど
吉井さんは今日は入浴日では無いし(一人週3回)
おしぼりたたみをしているから
確かに油は売って無いよね
吉井「も、んく……い、えない、はず……だ むこ、うも、ここも、かず、く ん、たちに、まかせ、きりな、んだ から」
和也「吉井さん……」
吉井「よ、うぼ、う、を……だす ことに、した」
和也「月一回《つきいちかい》?」
智「月一回。とは名ばかりで。 いつの間にか入居者の要望さえ聞こうとしなくなった、施設側に怒ってるんですもんね」
大野さんは、 介護サービス会社側の実習生として介護施設に入り込む事に成功していた
──
智『介護サービス会社の社長さんがね、 交渉したんでね。Noなんて言えるわけないもんね? いろんな証拠とかさ、こっちが握ってるんだから』
和也『怖っ、けど、確かにね、NOとは言えないですよねぇ』
──
吉井「ああ、しょうちゃん、るなちゃん……を、かんにん、ぶ、くろの、おが、き……きれ、たんだ、かずくんが、がん、ばっ、て……る、のに」
あまり上手く話す事が出来ない吉井さんが
一生懸命に話をして下さって
俺達の為に怒って下さっているのが
嬉しくて……