第56章 心がギュってなる悲しい告白だったんだ
智side
-トゥルルル……-
出ねぇなぁ
ル……
翔『はい』
出たっ
智「こんばんは翔ちゃん」
翔『こんばんは大野さん……』
智「……」
翔『……』
智「……」
翔『あ……さ、智さん……』
智「はい良く出来ました」
ねえ、悲しそうな声
どうした?
何かあったの?
気になってしょうがないでしょうよ……
智「翔ちゃん? リモートで話しようか?」
顔をオイラに見せて翔ちゃん……
翔「はい……」
──
画面の中の翔ちゃん……泣きそうな表情
智「どうしたの? オイラに話てみる? 心が軽くなるかもよ?」
話ちゃって良いのかな? って顔してる
翔『……私、るなちゃんのママが私のママだったら……って……』
智「うん……」
心がギュってなる悲しい告白だったんだ
翔「保育園に入るまでは本当のママとパパだって思ってた。近所の人か保育園の誰かの保護者か忘れちゃったけど『翔ちゃんのママじゃないよ』って言われて……凄く悲しくて……』
智「……し、んじらんない……」
言葉悪りぃけど…… バカかソイツ
翔『なんかね夢みたいな感じで覚えているの…… その人が家の玄関にいて謝ってて。るなちゃんのパパが『翔は私達夫婦の娘です』って 凄い怖い顔してたの覚えてる ……いつも優しくて穏やかだったのに……』
本当に……こんなにも苦しめて……
嫌がらせや、いじめってさ
加害者にはその場で終わった事でも
受けた側は…… ずっと続く痛みなんだよ……
翔ちゃんの心の中の悲しみを
軽くしてあげたいよ……
翔『パパは週末に家に遊びに来て。私とるなちゃんを色んな所に連れてってくれて……『叔父さん』だと思っていたの……』
智「うん……」
綺麗な大きな瞳に涙いっぱい溜めてさ……
可哀想過ぎるよ
翔ちゃん……
こんな時に抱き締めてあげられないなんて……