第32章 うん。覚えてる
智『翔ちゃん頑張ったね』
何回も言って下さる大野さん……
翔「けど……市の職員が来て『来栖さんを助けもせずにボンヤリしてたから』って……」
智『翔ちゃん、市の職員と御厨くん、るなちゃんの言葉どっちが正しい?』
翔「……カズくんと、るなちゃん」
智side
そう。二宮くんとるなちゃんだよ。全て見てたんだもん
信じらんねぇし、許せない! わざわざ病室に来て迄さ、翔ちゃんが記憶が曖昧なのを良い事に……
智『翔ちゃんは、 泳ぐの苦手なんだもんね? 来栖さんは怖くてバタバタしちゃたんだよね。 可哀想に……二人でパニックになっちゃって。翔ちゃんはお湯の中に沈みそうになったんだよ。来栖さんを助けたい一心からだよね。 必死にお湯から顔を上げて来栖さんを支え様とした時に、二宮くんが……』
翔「うん。助けてくれたの。カズくんもるなちゃんも、パパも『 助けられなくてごめんね』って ずっと言ってるの。けど……カズくんが『オイ! 何やってんだよ! ふざけんな! 』 って叫んで助けてくれたの覚えてる。るなちゃんだって 『翔ちゃん頑張って』って泣きながら励ましてくれたの覚えてる…… 曖昧な部分と、鮮明に覚えてる部分が混在しているけど、それだけは覚えてる。そしてパパがずっと、 病院で目を覚ますまで 『よく頑張ったな』って頭を撫でてくれているのを感じてた……」
それこそが
捻じ曲げられた真実の証じゃん