第2章 ⚫子犬から狼に変わる時。【エレン】※執筆中
勢い良く開いた扉の方を見ると、いつもの明るい顔とは打って変わった形相のエレンが立っていた。
見えない速さでリヴァイの元まで走ってきたエレンは、バキッと言う痛々しい音を一発あげた。
殴るエレンに、それを避けれなかったリヴァイ。
いや、わざと避けなかったのかもしれない。
頬を殴られたリヴァイは、抵抗しないままその場で俯いている。
「好きな女に無理矢理するとか、あんた最低だな。」
低い声で言い放ち、脱いだジャケットを掛けてくれたエレンに抱き抱えられる。
安心した余り、声にならない声でエレンの腕に泣き縋った。
「リヴァイ…ごめん…ごめんなさい…ッ」
貴方の不器用で真っ直ぐな気持ちに応えられなくて。
いや、違う。
リヴァイは亡くなった兵士達の想いを、生き残った私に重ね合わせていた。
いよいよ自分の同期が一人だけになり、もう失うのが怖いと、そう思ったからだろう。
それが好きと言う感情だけではなく、執着の渦に飲み込まれているのだと、私もリヴァイも何となく分かっていた。
無理に兵士達に取り繕うリヴァイを見ては、いつか壊れるんじゃないかと、胸が傷んだ。
それを解放させる場所が私になるとは思いもしなかった。
でも、私じゃリヴァイを救う事は出来ない。
リヴァイの過去と闇を、私は取り払えない。
長い間ずっと一緒だったから、分かるものがあった。
「もう大丈夫だから。」
気が付くと、私は自室のベッドに座って泣いていた。
隣にはエレンが力強くそう言いながら、私の頭を優しく撫でてくれている。
「エレン…ありがとう…。ごめんね。」
「謝らないで下さいよ。俺が一番大事なのは貴女なんですから。」
ふふっと笑顔で笑うエレンに、自分の心が落ち着いていくのが分かる。
「はぁ、今日はちょっとだけエレンに癒されたかも。」
涙を拭い、笑顔を作る。
「これでちょっとだけですか?!これでも俺、ナナさんが思ってるより結構モテるんですから!」
「それ言ったら全部台無しだよね…ふふっ。」
ハッとするエレンの顔にまた可笑しくなり笑うと、いきなり真面目な顔になったエレンにギュッと抱き締められた。