第21章 執事 SN編 ☆★
「行ってらっしゃいませ、和也様。」
「……………」
バタン…
二宮家に仕える櫻井は
半年前、長男の和也専属の
執事として二宮家の主人、
和也の父親に指名された。
しかし和也は全く櫻井に
懐こうとしない。
笑顔はもちろんのこと
声さえも聞けない日が
しょっちゅうであった。
そんな和也に、前の執事は
耐えきれなくなり辞めていった。
それでも櫻井は和也に
言葉をかけ続け、仕え続ける。
――――――――――
「お帰りなさいませ、和也様」
「……………」
「御夕食はお部屋の方で宜しいですか?」
「………ん、」
「はい。かしこまりました。すぐに御用意致しますのでお待ち下さい。」
「……………」
質問には軽く頷くだけ。
そんな和也相手に櫻井は
ニコッと笑顔で接していた。
「和也様。どうぞ、お召し上がり下さい」
「……………」
和也が食べている間、櫻井は
和也の斜め後ろで立っている。
「………あ…」
「どうかなさいましたか?」
「………鞄取ってきて」
「はい、お待ち下さい。」
今日の和也の表情はいつもより
明るいと、櫻井は感じていた。
「こちらで宜しいですか?」
「ん、…………はい、土産。」
「え…?あ、旦那様にですか?」
「違う。翔に。」
「私ですか…?」
「そう。」
「…あの……」
「………毒なんか入ってないよ」
「そ、そんなっ!とんでもないです…ありがとうございます。でも…本当に宜しいんですか…?」
「あんたのために買ったの。あんたが受け取らなきゃ無駄になるだろ」
「…はい。ありがたくいただきます。ありがとうございます。」
和也は櫻井に一緒に座って
ご飯を食べろ、など
たまにそういう命令をする。
櫻井はそんな和也に、
嫌われてはないと
勝手に確信していた。
だからこうして仕えているのだ。
しかしこういう土産は
初めてであった。