第3章 好きです、ハンジ先生!【科学教師のハンジさん/転生】
~その頃のエルヴィン~
「まさか、ハンジが自分のことにはこんなに鈍感だったとはな」
科学準備室の椅子に腰掛けたままエルヴィンは再び紅茶を啜る。
部屋にはエルヴィンの他に人影がひとつ。
「あのクソメガネも、
結局人の子だったってことだろう。
・・・・・・しかしエルヴィン。
よくこんなクソみてぇな所で茶が飲めるな」
エルヴィンの目の前の人物は散らかった部屋を見渡しながらジトリとエルヴィンを見つめる。
今すぐにでも部屋から出たそうだ。
「だが、香りは悪くねぇ」
フッと目が細められる。
素直じゃないやつだ。
とエルヴィンも目を細める。
なまえとハンジの想いが通じあって
嬉しいのはなにもエルヴィンだけではない。
エルヴィンはティーカップの中の紅茶を見つめると言葉を紡ぐ。
「この紅茶は以前私がなまえに教えたものだ。
ハンジさんがいつも飲んでいる紅茶はとてもいい香りがするがなんという紅茶ですか、と。
そんなこと本人に直接聞けばいいと思ったが。」
「乙女心ってやつは複雑なんだろ。
俺にもよくわからんが」
「そうだな。
なんにせよ、この紅茶がふたりを繋いだ。
そう思うと相談にのっていた私達の苦労もなかなか無駄ではなかった。そうは思わないか?リヴァイ」
目の前の人物に微笑みかけると
目の前の人物、元調査兵団兵士長はハッと吐き捨てた。
しかしその表情はとても穏やかに見える。
「悪くはねぇ、な」
エルヴィンはその言葉に吹き出した。
俺達がこんなにも平穏な日常を迎えられる日がくるとは一体誰が想像しただろう。
エルヴィンは紅茶を、
リヴァイはその香りを楽しみながら密かにハンジの帰りを待っていたのであった。