第23章 現【分隊長ハンジさん】
遠慮がちになまえが私の髪に触れた。
そのまま優しく頭を撫でられる。
「私、ハンジさんの中でも大きな重荷になりたかった」
「ハハ………重すぎるよ」
「私が死んでも、ハンジさんが人類を救ってくれるって、この人なら道を切り開いていける、進んでいける。そんな命ために死ねて少しでも思い出に残るならむしろ本望かなって思ってました、勝手に。ごめんなさい」
「ほんと、勝手だ…私も君も」
気が抜けたのか酔いが回ってきてフラフラする。
「眠い……………」
「部屋まで送りましょうか?」
「んー、んん……? いいよ、一緒に寝たい」
今にも堕ちそうな意識の中で彼女諸共ベッドになだれ込んだ。
「ここ私の部屋なのに」
なまえは困ったように笑うと私の眼鏡を外した。
律儀に折りたたんでベッドサイドに置くと、戻ってきて私を見つめてくる。
「…今何考えてるの」
「やっぱりこの人のためなら死ねるなーと、ベロベロな所も可愛い、なんて」
不穏な言葉とは裏腹になまえは照れくさそうに笑った。
すごく可愛いと、思った。
「ハンジさん酔ってるから、朝になっても忘れないでね。一晩の夢なんて私嫌だ」
「ハハ、どうだろう。
カッコ悪いこといっぱい言っちゃったからからなぁ……」
どちらからともなく、唇に触れ合った。
いつか一緒に居られなくなってしまうのかもしれない。
それでも何かで通じ合ったような今の方がずっといい。
永遠なんて誓えなくても、そんなつもりはなくても、傍で眠れる今がずっと幸福だと思った。