第22章 狡くてゴメンね【分隊長ハンジさん・R18】
翌朝、ハンジはいつにも増して穏やかな気持ちで目覚めた。
隣で穏やかな寝息を立てている存在に、なんて呑気なんだろうと思う。
そして、横で同じように布団に包まりながらそれをニヤけて眺めている自分も。
昨夜の暗闇の中ではあまり見えなかったがその目尻から頬にかけてくっきりと涙の跡が残っている。
ちょっと、やりすぎたかな。
ハンジは自分自身に苦笑すると、起こさぬようその跡を指先でそっとなぞる。
こんなにも想われるなんて、アンタは幸せ者だよ。
大切なものは大事に閉まっておかなくちゃ、悪い狼に喰われても文句は言えないね。
ちゃんと傍に置いておかないなら、私が貰う。
頭の中で、そこまでの宣戦布告をして、なんて低俗だろうと思う。
誰か一人に対して奪ってまで欲しいなんて自分には無縁の感情だと思っていた。
ましてや、直属の上司から。
エルヴィンが歓楽街へ向かったかも、なんて全くのハッタリだ。
どうせいつもの接待だろう。
しかし、なまえがあんなにも動揺するとは。
傷つけてしまったことは悪いと思っているが、とはいえ結果は上々、いや、それ以上に最高だ。
これから身体だけじゃなく、心も、私だけのものにしてみせる。
さて、なまえが起きた時どうするか・・・・
ハンジはこれからの算段を考えながら、そうとは知らず穏やかに眠っているなまえへ擦り寄り、首筋へ顔を埋めた。
起こさぬよう言葉だけの懺悔を呟きながら。
「狡くて、ゴメンね」