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短編集 【進撃の巨人/ハンジ・ゾエ】

第17章 キスから先の進め方【分隊長ハンジさん・R18】





「なまえが触れさせてくれない。」

「は?」


まだ執務中の真昼間、不機嫌な様子でズカズカと部屋に上がり込んできたハンジに何事かと尋ねればソファーに腰を下ろし開口一番発した台詞がこれだった。



「ハンジ、今は仕事中だ。後にしてくれないか」


目の前に山積みにされた書類と容易く言うことを聞いてくれそうもない部下を交互に見やるとズキズキと後頭部が痛んだ。
報告のため同席していたリヴァイも怪訝な顔をしている。



「後も何も、夜遅くまで仕事してるあなたに相談できる時間なんて今しかないと思ったから来たんだよ。
あ、これ提出の書類ね。」



そちらが本題のはずでは。そう出かかった言葉を飲み込むとハンジの話を聞いてやることにした。


「君たちが不仲だという噂は聞いたことがないが」

「不仲じゃないんだけど、むしろ仲は変わらず良好というか・・・・むしろ“何もない”んだよね」

「いいじゃないか、それの何が問題なんだ」

「だから何もないんだってば、キスしか」


ハンジの言いたいことをなんとなく察するとまだ空高く昇っている太陽を窓越しに眺めた。



「断れない雰囲気にすればいいだろう」


我ながら身も蓋もない回答だと思ったが昼間から仕事場である執務室で、しかも仕事が立て込んでいる中そんな話を長々とするつもりもない。


「してみたんだけどすぐ寝ちゃうんだよあの子。
それで考えてみたんだけどそもそも付き合ってる実感がないんじゃないかと思って。」

「・・・・それで?」


提案は解決策に値しなかったようで饒舌に話し出すハンジをもう止める術はなかった。


「あの子、キスは挨拶だと思ってるんじゃないかなあ。
エルヴィンもリヴァイもそう思わない?」


その言葉に普段のなまえを思い返してみる。
なまえは人当たりのいい明るい子で確かに挨拶と共に頬へ口づけをしてくることもある。
しかしそれはコミュニケーションの一環でお互いに深い意味はないだろう。


潔癖のリヴァイには気遣っているようで控えているようだが。


「確かに挨拶のキスも彼女の中には存在しているだろうな」

「だから、私への好きももしかしたら“人として好きだよ”の意味だったんじゃないかと思って・・・・」



そこまで言うと、いつもの威勢のよさはどこへ項垂れてしまった。


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