第12章 頭痛【団長ハンジさん・R18】
片目だけで世界を見るようになってから
取り巻く世界が変わった。
あんなにも色づいていた世界は
今はこんなにも冷たく、
まるで絵画のように平べったい。
平面の世界に映る人々。
その様子はまるで絵本の世界で、
自分自身も物語の世界に迷い込んでしまったように感じられる。
眼鏡のフレーム越しに眺めていた世界は
ますます客観性を帯びてきた。
何より一番困るのは、
団長になってから比べ物にならないくらい増えた書類業務への不自由さだ。
前と同じように見ようとすると、
瞳にはかなりの負担がかかった。
眼痛に眼痛から来る頭痛、肩こりは
今の私にとって深刻な問題だ。
だが、手を休める訳にはいかない
仲間たちの為にも。
山積みにされた資料に手を伸ばすが、
後一歩の所でバサバサと山が崩れてしまった。
距離を見誤ってしまったのだ。
ズキズキと頭が痛む。
「ああっくそ・・・!」
むしゃくしゃと頭を掻きむしると
執務机に突っ伏した。
「・・・・・・疲れた。
・・・少し休んだらやる・・・・・・休んだら・・・・・・」
やる。私はやる。
と自分に言い聞かせていると
執務室の扉が開いた。
「あ、ハンジさんまた散らかしてますね。」
「別に遊んでたわけじゃないよ・・・・・・」
なまえは笑うと
床に散らばった資料を拾い集めた。
こういう時、理由を尋ねないでいてくれるのは彼女なりの優しさだ。
綺麗に纏め机に戻すと、
私の成果を確認する。
「今までの中で1番ペースが早いんじゃないですか」
「片目だけの生活にも慣れてきたからね」
苦笑すると
眼帯の上から左目を撫でた。
団長という職は重い。
この左目にも、私の身体自身にも、
たくさんの仲間達の想いが乗っている。
再び書類に視線を戻すと視界がぐらりと揺れた。
「くっ・・・・・・」
右目の限界らしい。
目の前がぼやけて見える。
額からは冷や汗が吹き出た。
激しい頭痛が戻ってきた時、
身体がふわりと浮いた。