第8章 嘘
「…早くして。仕事始まるよ」
「うん、えっと…その、俺は…和と、別れたくないっ…!」
「……なんで。」
「それはっ!俺は和のことが………っ」
「……………」
翔くんはあと一歩のところで
真っ赤になってちらちらと
俺達の方を見てる。
そりゃ恥ずかしいよね。見られながら。
「あの、俺は本当に和のこと…」
「……………」
「本当に……大事、だし…」
「……………」
どうしても最後が言えない翔くんに
仕方ないから、俺達は2人に
背中を向けた。
「……和のこと、…愛してます!だから!!別れるなんて言わないで…!!」
「…やっと言ったヘタレ。」
「ご、ごめん……」
「………しょー、ちゃん♪」
「…和っ!!ごめんなっ本当にごめん!」
「…ん、」
振り返るとカズは翔くんの
腕の中にいた。
「やれやれ。」
「世話のやけるカップルで。」
「ほんとに。」
「ごめん、ほんとにありがと…」
「ありがとう、」
「明日、ちゃんと祝うんだよ!!」
「うん!和、迎えに行くから待っててくれる…?」
「ん、待ってる…」
「ごめんな、和…ありがとう」
「…しょーちゃん。……好きだよ!」
最後の言葉は俺達には聞こえなかった。
ただ、翔くんの真っ赤な顔に
想像はついたけどね。
End