第7章 聞きたいコトバ
「に…」
「もしもし?…うん…ちょっと待って」
俯いて携帯を触っていたにの。
声をかけようとしたら
着信音が鳴って、にのは楽屋を出た。
翔「…智くん、にのも…体調悪いよね…?」
智「……んー…多分。なんも言わないんだけど…」
潤「にの…俺に気ぃ使ってる…?」
智「んー……でも、熱はないよ、熱くないから」
翔「そっか…」
雅「どうしたんだろ…」
電話で出て行ったきり、
にのが帰ってこなかった。
翔「ねぇ、にの遅くね…?」
智「…ちょっと、見てくる…」
そんなに長電話してるの
見たことないし、
俺はさすがに心配になって
廊下やケータリングを探し回った。
ガチャ…
「…にの?いる?」
「………、」
「にの?にのなんだろ?開けろよ、俺だよ?」
最後に行ったトイレ。
一番奥の個室が閉まってた。
呼び掛けに返事はなかったけど
にのだって、分かった。
何となく、雰囲気がそう言った。
「にの!!」
「ゴホッ…」
「にの!?どうしたんだよ!!早く開けて、お願いだから!!」
中から聞こえた咳で、確信出来た。
必死で呼び掛けていると
やっと閉まっていたドアが開いた…
「にのっ…」
「…………」
「…どうしたの…吐いた?」
「…ん…」
「にの……」
さっき楽屋にいた時より
にのの顔色はすごく悪くなってて…
苦しそうに荒い息を繰り返した…。
「まだ吐きそう…?」
「…わか、なぃ…」
「今は気持ち悪くない?」
「ん、…」
「よしよし…立てるか?楽屋戻ろ…」
「だめ…」
「にの…!」
「…はぁ……はぁ……」
にのは楽屋に帰るのを嫌がった…。
理由は…知ってるんだ…
「にの…、しんどいって、言って良いんだよ…?」
「………」
「周りに迷惑かけるとか、そんなときまで考えなくていいの。ちゃんと、しんどい、辛いって、言って良いんだよ…。俺にだけでも良いから…隠さないで良いから…。我慢しちゃだめ。溜め込んだらだめ。ね…?」
「………」
「…まだ戻ってきそう?」
「ん、ん…」
「じゃあ…ちょっと、ここ出よ。歩ける?」
「ん…」
ふらふらしてるにのを支えて
俺はその近くの自販機の前の
ベンチに座った。