第13章 破面編(前編)
「…分からんな。記憶が残っていれば相応の力も使える。朽ちた体を有効的に活用しているだけの話だろう。中身等どれも同じだ。」
「馬鹿なこと言わないで。同じじゃない。海燕さんは優しくて仲間思いで陽だまりのような人だった。あんな冷たい目をしてないわ。見た目が同じでも中身が違うならそれは海燕さんじゃない。」
「…理解し難いな。」
「見た目より心が大事って事よ。」
「……。」
"心"。それは1番理解が出来ないものだった。それをこの女は、人間は、さも"有る"事が当然だとばかりに語る。目に見えないそれを一体どうやって存在証明をするのか。心とは一体、なんなのか。お前のその左胸を抉れば見て、知ることが出来るのか。俺には無いソレが、欲しい。
「…ウルキオラ?」
「…いや、何でもない。」
急に何も言わなくなった彼を訝しげに思ったゆうりは振り返る。ウルキオラは彼女と目が合うと無意識の内に伸ばしていた腕をピタリと止め下げる。
…俺はこの女に何をしようとしたんだ。ほんの一瞬だけ自分でも理解出来ない程強い渇望が頭の中を支配した気がした。
そんな彼の気など知る由もないゆうりは、1度小首を傾げるがそれ以上の追及はしなかった。
今はそれよりも、海燕の事で頭はいっぱいだった。絶対に、この戦いの中で彼を取り戻す。藍染の目を欺いてでも、これだけは譲れない。その強い想いを掲げて再び歩き始めた。
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