第12章 五番隊隊長就任編
気付かない間に、彼に守られていたのだ。報告を怠った事で、彼自身にも大きなリスクがあったというのに、それでも阿近は自分を信じ、守ろうとしてくれた事がただ単純に嬉しかった。
それが表情に現れていたのか、阿近は唇に弧を描かせて彼女の顎先を掴み持ち上げる。
「お礼は身体でもいいんだけど。」
「抱き枕になってるでしょう、今。」
「割に合わねぇなぁ。」
そう言って阿近は笑う。心に秘めていた感情を伝えて尚、変わらない距離感で軽口を叩け合える関係は、お互いに心地好く感じた。
それからしばらく、談笑している間にゆうりが先に眠りにつく。
「…ったく。幸せそうな顔で寝やがって。」
腕の中で無防備に、穏やかな寝息を立てる彼女の額へそっと口付けを落とす。
本当は、好きだと伝えるつもりなんて毛ほども無かったんだけどな。不安そうな顔をしたゆうりの姿を見たら、つい言葉が出ていた。それに、伝えた気持ちに嘘偽りは無い。生きて、ここに戻ってきて欲しい。
そんな想いを胸に抱えて瞼を伏せ、迫る睡魔に身を委ねるのであった。
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