第9章 現世編(後編)
朝、目を覚ましたゆうりは久方ぶりに制服に身を包み一護の眠る部屋へ顔を出した。穏やかな寝息を立てる彼の傍にしゃがみ片手を口元へ添え声を掛ける。
「一護、おはよ。一緒に学校行こう。今日終業式だよ。」
「んん……あれ、なんでお前が俺の部屋に…。」
「逆だよ、一護が喜助の商店に居るの。」
「あー……そうか、俺あのままここで寝ちまったのか。おはよう。」
一護は眠気まなこを擦り、大あくびをして上体を起こして大きく身体を伸ばす。傷の癒えた包帯をスルスルと取り外しながら彼は顔をゆうりへ向ける。
「わりィ、俺制服家だから1回帰らねェと。」
「それなら問題ありませんよン♡キミの肉体を持ってくる時ついでに持って来ましたから。」
「うお!?急に現れんな!!」
扇子で口元を隠しひょこっと後ろから頭を覗かせる浦原に一護の肩がビクリと跳ねる。音もなく突然現れるこの男は妙に心臓に悪い。
「着替えたら朝食用意してるんで居間に来て下さい。お勉強会は夜やります。ちゃーんと泊まりの連絡、親御さんにして来て下さいよ。」
「分かった。」
「ほら、ゆうりもご飯食べましょ。」
「はぁい。」
「あ……なぁ!!」
浦原に呼ばれ立ち上がったゆうりの手首が咄嗟に掴まれた。引き留められた彼女は目を丸めて一護を見下ろす。浦原は先に居間へと行ってしまった。
一護はゆうりと目が合うなり、ハッとした表情で掴んだ手を離す。
「どうしたの?一護。」
「お前、あのゲタ帽子とどういう関係なんだ?」
「喜助さん?私の親代わりみたいな人だよ。尸魂界で困ってた私を拾ってくれた。」
「拾った…?」
「尸魂界に導かれた魂は死神によってランダムに住む場所を決められるの。親と一緒に居られる確率なんて殆どゼロに等しい位広い。私はまだ子供だったけれど、霊圧がとても高くてそのまま尸魂界に居ては危険だって事で、ちょっとね。」
「……それってつまり、あのゲタ帽子はゆうり以上に強いって事なのか…?」
「それはどうだろうね!戦ったことは無いから。そんな事より、早く支度しないと遅刻しちゃうよ〜?」