第7章 死神編【後編】
「え?僕ですか…?」
「四番隊出るまででええよ。ほな行こか。ゆうり、あんま1人で無茶したらあかんよ。ゆーっくり休み。」
「ありがとう。またね。」
市丸は立ち上がり彼の背へぽんと手を宛て外に強引に連れ出し行ってしまった。
ゆうりは二人の出て行った扉を見詰める。…いつもと変わらず、彼と接する事は出来ただろうか。何か悟られたりはしていないだろうか。何故吉良に目を付けたのだろう。理由が全く分からない…。それと、やはり彼の優しさも向けられる好意も偽ってる様には見えない。平子達の言っていたことは嘘だったのでは、と一瞬でも思ってしまう程に。
緊張の糸がフツリと切れた。片腕で目を覆い隠し、細く息を吐き出す。油断はしない、絶対に。たとえ市丸が何か気付いていたとしても、直接何か言われるまでは今までと変わらない関係を貫くのだ。気付いていないフリを続けろ。私は彼らの目的を全て知る訳では無いのだから、下手な事をするべきではない。
「ゆうりさん、点滴入れますね。」
「あっ…勇音副隊長。よろしくお願いします。」
ぐるぐると思考に囚われている内に勇音が訪れていたらしい。同時に解熱剤の薬液が入った点滴パックが運ばれて来た。点滴針が左腕に刺され、チクリと痛みが走る。
「死神になってから風邪なんて初めてですよ…お手を煩わせてすみません。」
「いえ、ゆうりさんも知っての通り四番隊はこれが仕事ですから。疲労による発熱だとは思いますが、何かあったら直ぐに呼んで下さいね。」
「はい、ありがとうございます。」
勇音は柔らかく笑い点滴の処置を終えると部屋を後にした。静かになった部屋で瞼を降ろす。まさか自己管理を怠ってしまうとは、元四番隊として恥ずかしい限りだ。早く治して仕事に戻らないと…。冬獅郎にも会いに行けなかったな。
色んな考えが頭の中を巡っている内に自然と睡魔が訪れる。ゆうりはそのまま暗い眠の中に意識を落とした。
「…ここか。」
「はい、点滴の処置を終えたと聞いているので暫くすれば熱も引くかと…その…お、思います…。」