第4章 死神編【前編】
「ボク欲しいモン手に入れるのに手段は選ばへんよ。今みたいに。」
「そう…?その割にすごく優しかったけど。」
「欲しいのは身体もやけど、心も欲しいんよ。キミがボクに堕ちてくれるなら、幾らでも甘やかしたるわ。」
そう言って彼は笑いながらゆうりの左胸を軽くトンと叩いた。その言葉が本心なのか表情からは全く読み取れない。けれど、それが本心であると信じたいとは思った。
「…ギンもたいがい不器用よね。お風呂借りるよ。」
「えぇ、君に言われた無いんやけど…行ってらっしゃい。」
パッと毛布から飛び出したゆうりは逃げるように風呂場へ向かった。市丸は彼女の背中を見て笑みを濃くする。
「ほんま、素直なんやからなぁ…。」
自分まで毒されてしまいそうだ。
彼女にやりたい事がある様に己にもそれがある。それを成し遂げた時、手段を選ばず目的の為なら殺しも厭わない…そんなボクはキミの傍に居られるのだろうか。
そんな事を考えて空に浮かぶ欠けた月を見上げた。
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