第1章 事の始まり
どうしよう、何て考えながら困った顔で立ち尽くす私に山姥切さんは、嗚呼と何か納得したように頷いてはふわりとほんのり困ったような笑みを浮かべて、銀髪の美人さんに視線を流す。
「俺も流石に驚いただろう。こうなっているだなんて俺達からしてみれば想像もつかないだろうし、そもそもこれは本来なら有り得ない事だ」
「嗚呼、そうだな。確かにそうだ。だが……なら、あんたらは一体何をどうしたらそうなった?」
山姥切さんの言葉にこくりとひとつ頷いて見せながらも、己が抱いた疑問を口にする。
段々見ている内に、あの銀髪の美人さんが馴染みがコスプレしてたキャラだということに気がついた。名前は…同じ山姥切だ、ということしか知らないけれど、取り敢えず私が成り代わった山姥切国広の本歌であるということも理解はできる。
というか滅茶苦茶力説されたから嫌でも何か覚えていた。
そんな二人だが、聞いた話によると本歌は山姥切伝説を否定され、写しにのみその名が受け継がれたが逆に山姥切国広は本歌とずっと比較され続けたらしく。…そうして双方が人の噂と比較され続けたことによって関係が歪んだらしい。それ故に山姥切国広は己を写しだと卑下し、そして己の殻の中に引きこもるようになり。本歌はそんな彼を偽者と呼び、常に彼と比較し、己が勝っていると証明しようとしている。だからこそ闇が深い、と凄い高速で力説されては謎の妄想にまで付き合わされたそんな記憶が物凄く脳にインプットされていた。
だからこそ不思議だ。何をどうしたらあんなに山姥切国広を偽者と呼んでいた彼が彼処までなんというか、その、過保護?な状態になるのだろう。何か深い理由でも有ったのだろうか。
「それなら、丁度長義が顕現されてご対面した際に俺が吃驚し過ぎて布踏んで盛大にずっこけ、長義に過って抱き着いた瞬間ああなったぞ、何でだろうな」
「……いや、よくそうなった経緯が理解できないのだが…」
「奇遇だな、俺もだ」
「………そ、そうか」
………何か思ってたより平和でした。
なけなしの知識をもとにあれこれ考えてたのに予想の斜め六十度上いかれたよ、吃驚。