第1章 事の始まり
「今日も仕事終わり!やっと家に帰れる…!」
会社にて入社してから三年の付き合いとなるパソコンとにらめっこしながら一心不乱で資料を作成、修正等を行ってやることを片っ端から潰していけば仕事はあっという間に終わっていった。もうするべきことは消え、課長にも今日のノルマが終わり次第帰ってもいいと言われている。というわけで今日は早めに仕事を上がることに成功した。やったぜ。
「それじゃあ、お疲れ様でした!」
未だにノルマが終わっていないらしい何人かの同僚からの未練がましい視線を背に受け止めつつ、私は何時もの倍以上の笑みを浮かべてそう挨拶すれば様々なところからお疲れ様です、との声。その声を聞いてぺこりと一礼しては会社から出ていった。…あ、さっきの笑顔多分今年一番ではなかろうか。いや、絶対そうだ。
電車に乗って、何時もの最寄り駅迄行っては其処から歩いて。そんな何時もの帰り道の筈、なのに心がこんなにうきうきするのは絶対仕事が早く終わったからだ。何時もなら疲れてとぼとぼ歩いている筈なのに、今日は嬉しすぎてスキップしていた。お陰で周りの人から変な目で見られ、小さい子には指を指された、が人生そんなことで気にしちゃいけないと思う。
そんなハイテンションなまま、スキップすること五分。我が家であるとあるマンションに到達し、急いで階段を駆け上がっては勢いよく自宅の扉を開ける。
「ただいま!」
そう、誰もいない部屋に大声で帰りの挨拶をしてはどたばたと中に入っていく。さて、折角の空きだ。こんなことはあまりないのだから充分に堪能しなくては。何をしようか、なんて頭の中で思考しながら着ていたスーツを脱ぎ、ラフな格好に着替えた。
「さて…何かやるものやるもの…。うぅん、案外そう考えると無いものだなぁ…」
取り合えず何かしようと立ち上がったのだが、案外考えてみると何もなく。あるとしたら録り溜まった録画を見るぐらいか。他は何処かに行くという手も有るが、生憎疲れているからあまり此処から出たくない。
「なら録画見るかぁ…あ、最近面白いドラマやってる、って友達言ってたし…それを見ようか」
ぼんやり考えても録画を見る、という選択肢以外あまりいい案が出なかったのでそれを見ることに決めてはクッションを持ってソファーに座り込んだ。