第73章 来年の今頃は 〜お正月sp〜
心地良い眠りの中、
「アヤ」
大好きな声が私の名を呼ぶ。
「……ん、」
「アヤ起きよ」
もう一度その声は私の名を呼び目覚めを確かなものへと変える。
「……あ、信長様……、もう着いたんですか?」
目を開けた先には信長様の呆れた笑顔で、自分が信長様の馬の上でいつのまにか眠っていた事を思い出した。
「かなり寝ておったが、まだ寝足りんと見える」
「ええ、日々寝不足ですから」
クスッとイタズラに笑う顔を私はじとっと恨めしげに見る。
「早く寝ればよかったではないか」
信長様はしれっとそう言って、私をギュッと抱きしめる。
「私は早く寝たいって、昨夜は言いました。 って言うかいつも言ってます」
(それなのに、何回も求めるのは信長様でしょ!)
恨めしげな視線を信長様に投げ続けるも、
「そんな言葉、俺は聞いておらん。俺が昨夜聞いたのは貴様の甘い喘ぎ声だけだ」
艶のある声で言い負かされ、更に耳をカプッと口で挟まれた。
「ひゃっ!」
「その声だ。俺を煽り歯止めを効かなくする」
腰に回された手には力がこもり首元にはチクっと甘い痛みが……!
「んっ、信長様、馬から落ちちゃいます」
「貴様も学ばんな。俺はそんなヘマはせん」
「もうっ、そう言う問題じゃなくて……ぁっん」
馬を操りながら私にイタズラを続ける信長様が突然二人旅に行こうと言ったのはつい昨日の事。
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「アヤ、明日から二人で湯治に出る」
付き合っている時から信長様の予定はいつも急だったけど、流石にこれには自分の耳を疑った。
「え?」
「聞こえなかったか?明日は二人で湯治に行く。もちろん泊まりだ」
聞き間違いではなかった様で、どうやら信長様は明日から私と二人で温泉旅行に行くつもりらしい。