第72章 夫婦の絆〜信長様誕生日sp〜
私と信長様の二人目の子が、この春(暦の上で)誕生した。
二人目は女の子で名前は紗菜。
信長様が幸せを願いそう名付けてくれた。
とは言え時は戦国時代。
天下統一を目指す私の旦那様は、紗菜のお産の時には戦地へと赴いており立ち会うことが出来なかった。
また戦況が大きく動いて各地の大名達が織田軍に下る事になったため、その話をまとめるべくそのまま堺から西の土地を行き来する日々が続いていて、もう二ヶ月以上安土には戻っておらず、生まれた我が子にはまだ会えないでいた。
じゃあどうやって信長様が紗菜の名前を決めたのかって?
それは戦地に行く前に事前に決めておいてくれたから。
女の子の名前しか紙に書かなかった信長様に男の子の名前は?と聞いたところ、
『此度は姫で間違いない』
といつもの得意げな顔で言われ、そしてその通りに女の子が生まれた。
「ははー、あそぼー」
二歳半になった吉法師はたくさんお話もできるようになって動きも活発になり、その分目が離せない。
「うん、いいよ。じゃあまず紗菜を寝かせてあげたいから手伝ってくれる?」
「うん。紗菜ねんね、ねんね…」
小さな手が更に小さな紗菜の頭を撫でて「ねんね」と眠りのおまじないを唱える。
(くぅ〜、可愛すぎるっ!)
いつでもこんなにすんなり言う事を聞いてくれるわけではないけど、それでも吉法師 は幼いなりに紗菜の面倒を一生懸命見ようとしてくれていて、それがとても愛おしい。
子供が二人に増えて子育てはもちろん大変になったけど、何と言うか一人目の時よりも気持ちに余裕はあったりする。
「紗菜ねたね」
「ふふっ、吉法師のおまじないが効いたみたいね。ありがとう」
眠りについた紗菜は彼女付きの侍女にお願いをして、私は吉法師と中庭へ向かった。