第71章 夢が見せる奇跡 〜年末年始特別編〜
「……………」
分かってはいたけど夢だったのだと、隣で眠る信長様を見て再確認する。
でもきっとお母さんもこの夢を見ている。そんな気がしてならなかった。
「…起きたのか?」
夢と同じ愛しい人が私を腕の中に閉じ込める。
「はい。明けましておめでとうございます」
「いやにスッキリとした顔をしておるな?よほど良い夢を見たと見える」
不安の取れた私に信長様はすぐに気がついた。
「はい。とても良い夢を見ました。……っ泣けるくらいに素敵な夢を…」
何とか堪えようとした涙はやっぱり溢れてしまう。
そしてその涙を信長様が夢と同じように拭って私の額に口づけた。
「貴様の泣き虫は今年も変わりそうにないな」
「うぅ…頑張って直します」
「頑張らずとも良い。貴様の嬉し涙は結構気に入っておる」
目を細めて笑うと唇が重なった。
「ん………」
もう長いこと触れ合っていない体はやわらかなキス一つで疼いてしまう。
「っん、信長様……っ」
そしてそれは信長様も同じはずで……
なのに信長様は私のお腹に当たらないよう私の顔の横に両腕をついて私の頬を手で包み更に深い口づけへと変えて行く。
「っぁ、……ん」
「……っ、これ以上はまずいな……」
私の気の昂りに気がついたのか、それとも信長様もそうだったのか…、信長様は苦笑いをしながら唇を離した。
「……っ、」
はぁ…と吐息を吐くと、「悩ましげな声を漏らすな」と言って、信長様はまた笑った。
「信長様があんな口づけをするからです…」
このまましてしまうんじゃないかと思うほど一瞬で蕩けさせられる口づけだった…
「新年の挨拶はしかとせねばと思ってな…だが危うく貴様を抱きそうになった」
「…っ、私も同じです」
今しか感じることのできないこの夫婦の時間も大切だけど、信長様の腕の中で信長様を感じる時間も恋しい。
「あとひと月はお預けだな。だが今はゆるりと腹の子を産むことを考えよ」
「はい。ありがとうございます」
お互いに見つめ合い抱きしめ合う。
昨日までの不安は不思議なほどに消えている。
新年早々に母の夢がもたらした奇跡により二人目の子となる紗菜はその後無事に生まれて天主はもっと賑やかになる。
二人の甘い夫婦生活については、また次の機会のお楽しみと言うことで……