第70章 あの頃の気持ち
「背中に痛いほどの視線を感じたからな。寄り道は禁じてあったはずなのに懲りずにあんな所にいる貴様を少し懲らしめてやろうと、遊女の誘いに乗ったフリをしたまでだ」
「じゃあどうしてそう言って…」
あんなお仕置きの仕方…
「頭から浮気を疑われれば俺とて傷つく。やり返したくなる気持ちも理解しろ」
ふんっと、信長様は拗ねた顔を見せた。
「っ、ごめんなさい…でも、あの…私の態度で傷ついたんですか?」
「はっ?貴様…俺を何だと思ってる?」
私の指摘に、信長様の頬が僅かに赤くなった。
(もしかして…照れてる…?)
出会った頃は感情の読めなかった人が、私の一言で傷つくと言ってくれる事が、そして気まずそうに照れる仕草を見せてくれる事が、不謹慎だけど嬉しくてたまらない。
「俺に人としての感情を教えたのは貴様だ。貴様の言動一つで、俺は天にも昇る気持ちになるし、地の底に落とされる気持ちにもなる」
「それは、私だって同じです。」
信長様の言動で、私は泣いたり喜んだりと忙しくて仕方がない。
「俺を生かすも殺すも全て貴様次第だと言う事、よく覚えておけ」
「………っ」
これ以上の愛の言葉があるだろうか?
こんな素敵な愛の言葉は私には言えないけど、気持ちを伝えようと口を開くと、あっという間に信長様の唇に塞がれた。
「んぅ…」
もう、言葉はいらないらしい。
そして、嬉しくても涙は溢れ出た。
情熱的なキスと最大級の愛の言葉の中ふわふわした気持ちで、私は気がつけば天主の褥の上へと運ばれていた。
「…おい、これはどう言う事だ?」
「えっ?」
「痩せた上に狭い」
「へっ?なっ、何言って….」
褥に寝かされ、蕩けるような愛撫の最中に、信長様は目が覚めるような一言を発した。
(狭いって、そんなストレートに口に出さないで欲しい)
「っ、ご飯は確かにあまり食べる時間がなかったから痩せたかもしれませんが、でも、そっちは私の意思で何とかなるものじゃ…」
(うーー、自分で言ってて恥ずかしい)
「貴様はまこと手が掛かる。力を抜け、これでは入らん」
「も、もう抜いてます、……んっ」
長い指が私の中をゆっくりと開いて行く。