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恋に落ちて 〜織田信長〜

第68章 初夢〜新年特別編〜



元旦の夜、朝から続いた新年の挨拶や宴を終えた信長様は、天主に戻るなり私の膝の上に頭を乗せてごろんと横たわった。


「お疲れみたいですね」

「ん?…ああ、堅苦しい挨拶続きでつまらん」

膝の上で愚痴りながら目を瞑る信長様の髪を、私は撫でる。

「明日もまだ続きそうですか?」

「そうだな。挨拶になど来ずとも良いとふれを出してあるのにこの有様だ。無碍に追い返すわけにもいかんしな」

「そうですね」

ふふ、やっぱり優しい。
信長様の些細な配慮に嬉しくなってしまうし、そんな些細な事を私に愚痴ってくれるのも嬉しい。


「三が日が終われば少し休みを取る。貴様とゆるりと過ごしたい」

「はい。楽しみにしてますね」

「アヤ」

逞しい腕が私の髪を梳いてそのまま顔を引き寄せられた。

「……ん」

ゆっくりと重なった唇は何度も角度を変えては啄まれ熱を灯されていくけれど…


「んっ、明日も朝からお忙しいなら、今夜は寝ませんか?」

今日は本当に疲れているみたいに見えるし、休んでもらった方がいい気がして、私は信長様の胸をそっと押して離れた。


「貴様は何年経っても覚えんな、貴様を抱かねば俺の眠りは訪れぬ」 

「……っ、わっ!」

押した手を絡め取られると、体がふわりと反転して絨毯に沈められた。

「で、でもぐっすり眠らないと、初夢も見られませんし…」

幼稚な提案だと笑えたけど、何とか眠って体を休めてもらうために、初夢という言い訳が出た。


「初夢だと?何だそれは?」

「えっ?初夢を知らないんですか?新年初めての夜に一富士・二鷹・三茄子の夢を見るとその一年良い事があるんですよ?」

「?…初めて聞くが面白い事を言う」

この時代に、初夢という考え自体がないのだろうか?信長様は本当に知らなそうだ。だとしても、今夜くらいはしっかりと寝てほしい(三が日を過ぎれば長〜い夜がやってくるわけだし…)


「でも、年の初めくらい吉夢を見て素敵な一年にしたくありませんか?」

「ふっ、夢などでその一年を占おうなど笑止!人生とは己で切り拓き進むものだ」

「そりゃあ、そうですけど…」

「俺は夢などには惑わされん。俺にそんなにも寝てほしいのならつべこべ言わずに貴様に触れさせろ」

「んっ!」

説得は失敗に終わり、私は信長様の腕の中で酔わされ、その後眠りへと落ちた。



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