第67章 信長様は構われたい
『俺をあまり放っておくな』
「………っ」
お腹の奥がキュンと疼いて昨夜の激しい熱を思い出す。
信長様は確かにすぐに拗ねるし嫉妬もするけど、あんなにもむき出しの感情と言葉を向けられたのは久しぶりだ。
昨夜は驚いたけど、それ以上に心の内を見せてくれて嬉しくて幸せだった。
それに、こんなにもぐっすりと温かな気持ちで寝たのはいつ以来だろう?
抱きしめられた腕の中からそっと見上げれば、愛しい人が眠っている。信長様だってお疲れなのに…
布団から出ることはやめて、一糸纏わぬ姿のままの互いの体をもう一度ぴったりとくっつけた。
「嫌いなんて言ってごめんなさい。本当は大好き。信長様、大好き」
嫉妬されるのも、寂しい思いを伝えてもらうことも、とても嬉しかったのに。
「当たり前だ」
返事はすぐに返ってきた。そうだ、私の大好きな人は眠りの浅い困った人だった。
「ふふっ、やっぱり起こしちゃいました?」
「貴様の独り言は心の臓と同じくらい煩いからな」
「もうっ、それは言い過ぎです」
「本当のことだ」
ニッと、いたずらに笑うこの人が私は本当に大好きで大切で幸せだ。
「朝餉の前に湯浴みにでも行くか?」
信長様は私の髪を梳いて額に口付ける。
「んーー、それも行きたいですけど、あと少しだけ、こうしてくっついていてもいいですか?」
あと少ししたら、また私たちはお互いに忙しい日々に戻ってしまう。だからもう少しだけ、この甘くくすぐったい時の中にいたい。
「構わん、俺も同じことを考えていた」
信長様はそう言うと、脚も絡ませて私を包み込む。
「アヤ、愛してる」
「私も、愛してます」
大きな手が私の頬を撫でると、優しい口づけが落ちた。
その後、朝日が完全に姿を現すまで、私たちは甘く深い口づけを交わし合った。