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恋に落ちて 〜織田信長〜

第9章 爪痕



事の発端は、昨夜。

安土城では、近隣諸国の大名達を招いて宴が開かれた。

信長様の権力が強大だと見せつけ、また相互間の絆を固いものにする意味でも、宴は常に重要な意味を持つ。豪華な食事や安土の地酒、食事の間には能が舞われるなど、一大イベントだ。

私はと言えば、これもまた信長様の寵姫として恥ずかしくない様に、いつも以上に豪華な装飾品に身を包まれて、信長様の横に座っていた。

客人達が、次々と信長様にお酌をしに来る。その度に私にも一献と言ってお酒を勧められる。断るのが忍びなく、仕方なく受けるだけ受けると、
「こやつは酒が飲めん」
そう言って信長様が横から手を伸ばして私のお酒を飲み干してくれる。

「これはこれは、信長様の溺愛ぶりは我が国にも聞こえておりましが、誠でございましたな。はははっ」

客人が豪快に笑う。信長様も笑う。宴の間はずっとこの繰り返しだ。


安土の武将達は、政宗を除いて酒豪揃いなのか、どんなに飲んでもみんな顔色ひとつ変えない。(飲む振りが上手なのかも?)
誰も乱れているのを見たことがない気がする。

(そんなに美味しいのかな)と、
ふと、興味が湧いた。

無理やり飲まされた時は味なんてしなかったから分からなかったけど、もしかしたら美味しいのかもしれない。未来にいた時も、カクテル位は飲んだことがあるし、信長様と一緒に生きて行くためには、お酒も飲めた方が良いに決まってる。

秀吉さんに呼ばれ、信長様が少し席を外した時に、飲んでみようかどうしようか迷いながら徳利を見つめていると、

「なんだ、アヤ。酒に興味が湧いたか?」
光秀さんに声を掛けられた。
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