第66章 全てはあなたを喜ばせるため 〜信長誕生日sp〜
五月に入り暖かい日が続く今日この頃......
「よいしょ....」
私は、少しずつ衣替えの準備を始めていた。
もう次の冬までは着ないであろう厚手の物から順に、天気の良い今日の様な日に虫干しして、片していく。
「だぁ、......ぁぶぅ....」
「ふふっ、もう少し待っててね」
お布団で寝転び日光浴中の吉法師は、ここ最近よく寝返りを打つ様になり、寝たきりでいてくれた頃と違い、目が離せなくなって来た。
「ばぁーーー」
「なぁに?ご機嫌ですね〜」
とは言え、ご機嫌にお話をする吉法師はとても信長様に似ていて可愛い。
信長様には内緒だけど、信長様の赤ちゃんの頃もこんなに可愛かったのかなぁと、あの俺様な人とミニ信長様(吉法師)を日々比べては密かに楽しんでいる。
「うーーーん、私も少し休憩しようかな」
子育ては想像以上に体力勝負で、読書をしたり、ぷらっと買い物に行ったり等、いわゆる自分の時間と言うものがゼロになったと言っても過言ではない。
産んだばかりの時は自分で何でもしなければと必死になっていたけど、半年が過ぎ、色々な経験を経て、今はお城の皆んなに助けてもらいながら、何とか新米母をやっている。
「あー、だぁーー」
「ふふっ、母が来て喜んでくれるの?あっ、機嫌がいいみたいだし、今書いちゃおうかな」
紙と筆を取り出して、ご機嫌に寝返りを打ち笑う吉法師の姿を描く。
絵は服のデッサンで描いていたけど、私はそれ程上手な方ではなくて.........。でも写真のないこの時代、彼の何気ない一瞬をいつでも思い出せる様に、絵で残して戦国時代版育児日記を付けている。
「だぁーー」
「うーーん、かわいい」
吉法師の布団に一緒に横になり、吉法師の頭を撫でる。
「愛してるよ〜」
チュッチュッチュッと、わざと音を立てて顔中にキスをすると、吉法師はきゃっきゃっと声を上げて喜ぶ。
そんな吉法師を見ていて、ふと、自分を何て呼ぼうかと悩んだ事を思い出した。