第64章 貴方と温まる夜〜大晦日特別編〜
「はぁ、はぁ、はぁ.......」
情事後の荒い呼吸を整えながら、私と信長様は汗ばむ肌をピタリとくっつけて褥に横たわっている。
「アヤ、除夜の鐘の音だ」
「はぁ、はぁ、..........本当ですね。全然気が付きませんでした」
「ふっ、当たり前だ、今の今まで俺に啼かされておったのだからな」
「っ、そうですね」
私の喘ぎ声で聞こえなかったんだ......
「でも、信長様の妻になって、初めて二人で年を越してからもう一年なんて、早いですね」
「そうだな。一年前は二人であったが、今年は一人増えたしな」
「ふふっ、そうですね」
「ふぎゃっ、ふぎゃっ、ふぎゃーん..........」
「噂をすれば、うるさい奴が起きた様だな」
信長様は隣の部屋を見てククッと喉を鳴らした。
「ほんと、信長様の読み通り、この時間に起きましたね」
「貴様に似れば良く寝た赤子となったであろうに、あの眠りの浅さは俺に似たか?」
「ふふっ、そうかも」
出会った頃はもっと信長様の眠りが浅かった事を思い出す。あの頃に比べるとかなり良く眠るようになったけど、たまにはもう少し眠ってほしい(寝させてほしい)な.......。
「貴様から離れたがらぬ所も俺に似たようだな」
からかいまじりに言うと、私のおでこに軽くキスをしてくれる。
「あの、飲ませてあげてもいいですか?」
「構わん。そうせねば泣き止まぬしな。連れて来てやるゆえ待っておれ」
まだ、情事が済んだばかりの私達はもちろん裸で、信長様はさっと簡単に着物を羽織ると、隣の部屋で泣き声を上げる吉法師を迎えに行った。
私もその間に着物を羽織り、授乳の支度をする。
「ほら、母の元へ行け」
息子を抱き抱え戻った信長様は、優しい顔で息子を見ると、私の膝の上に優しく置いてくれる。
「吉法師お待たせ。お腹すいたね」
ギャーギャーと泣いていた吉法師は、私の胸に手を当てお目当てのものを探し当てると口に含み、安心したように大人しく飲み始めた。