第62章 旅立ちの日〜最終章〜
五百年の時を超えて戦国時代にやって来た私は、一生に一度の恋をした。
悲しい事も、辛い事も沢山あったけど、いつも信長様に支えられ、深い愛に包まれていたから、乗り越えられた。そして、それはこれからも変わらない。
「あーー、父上と母上が仲良ししてる」
「あっ、」(やばっ、)
「貴様、目をつぶっておれと申したのに」
「ずるい、吉法師とも仲良しして下さい」
信長様に抱っこされながら、交互に私たちを見て吉法師がせがんできた。
「そうね」
「そうだな」
見つめ合い、笑い合う。
「愛してる」
「ふふっ、私も愛してます」
「吉法師もーー」
私達の間に宿った宝物を二人でギュッと抱きしめ、彼の左右の頬にそれぞれキスをした。
私はこの調子で、信長様の子供を男女合わせて十人産むことになる。
これが後の歴史家の中で、信長の正妻子沢山説と、実は愛人がいた説へと分かれて行くのだが、それは私たちの預かり知らぬ事。
「今夜は夕餉を天主に運ばせる」
「えぇっ!いや、私身ごもって.......」
「その話は明日まで聞かなかった事にする」
「もうっ、信長様っ!紗菜の時も同じこと言ってましたよ」
「貴様が煽るのが悪い」
「もう、煽ってません、いつ煽ったんですか?」
「父上、母上、喧嘩はだめです」
「吉法師助けて、父上が母上をいじめます」
「貴様っ、子を使うとは卑怯な.......」
「父上、だめですよ」
「むぅ.......だが譲れん......」
「もう............」
「.............................」
大好きな人と歩む私の歴史は、まだまだ続いていく。
この先もずっと.............
完