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恋に落ちて 〜織田信長〜

第62章 旅立ちの日〜最終章〜













「ふえええっ、ふえーん、ふえーん」


「うーん、泣き止まないなぁ。えーと、ご飯は食べたばかりだし、おしめも替えたし、何だろ、眠いのかな?ねんねかな?」


泣き出した我が子を抱っこしてあやすけど、中々泣き止まない。泣きのツボに入った赤ちゃんは中々に厄介だ。


「母上ー、お外行きたい」

ぐいっと、もう一人の子供が私の袖を引っ張って外へ行きたいと言ってくる。

「お外?えっと今だよね?ちょ、ちょっとだけ待ってて」


「ふええええーーーん」

「わー、泣かないでー、大丈夫だよ〜」

二人の子供の間でワタワタしていると、


「アヤ、紗菜をかせ」

信長様が部屋に入ってきて私の手から紗菜を引き取って抱っこした。


「信長様、軍議は?」

信長様が紗菜を抱っこすると、紗菜はぐずっていたのが嘘の様に泣き止み、うとうととし出した。


「休憩だ。紗菜は俺に任せろ、貴様は吉法師を外に連れてってやれ」


「ありがとうございます。吉法師お待たせ。お外行くよ」


御伽草子を見ながら待つ吉法師に声をかけ、部屋の縁側から外に出た。





「母上ー、あそこにつくしが!」

庭に生えているつくしを見て吉法師が嬉しそうに走り出した。


「吉法師、走ると転ぶから危ないよー」

私の心配をよそに、吉法師は元気につくしを取りにかけていく。



信長様を戦に送り出したあの日から、四度目の春が来た。

信長様との間にできた最初の子、吉法師は三歳になった。


この四年の間に、信長様は各地の大名と和平を結び、最後の毛利元就との和平も漸く締結し、長く続いた戦国時代に終止符を打った。

これから、各地の大名達と協議を開いてこの日ノ本を一つに束ねていくと言う、とんでもない大仕事を抱えているけど、信長様はとても楽しそう。


「アヤ」

中庭で子供を遊ばせている私の元へ、信長様が戻ってきた。

何年経っても変わらず愛しいその人に、私はやはり見惚れてしまう。




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