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恋に落ちて 〜織田信長〜

第62章 旅立ちの日〜最終章〜



片付けを済まし信長様を見送る為、石段を降りて行くと、出発を控えた兵達が溢れていて、先に進めそうにない。


信長様はどこにいるんだろう?


さっき、いってらっしゃいとは言ったけど、やっぱり背中が見えなくなるまで手を振って見送りたい。


でも、この人だかりだと、先頭の方へは行けないかな。

ぴょんぴょんと飛んで先を見ようとしても、全然見えない。

こうなったら、石垣に少し登って見よう。

キョロキョロと周りを見渡し、着物の裾を広げて石垣に手を掛けた。


「まさかとは思うけど、その石垣を登ろうとはしてないよね?」


ため息に混じって呆れた声が背後から聞こえて来た。

石垣に手を掛けたまま振り返ると

「いっ、家康!」

呆れた顔の家康と、手を口元に当て笑いを堪える政宗が。

「あんたはもう、あんた一人の体じゃないって自覚ないわけ?」


ジロリと、家康は睨む。


「やっ、あの、自覚は........ごめんなさい」

正論すぎて何も言い返せない。
ゆっくりと、石垣から手を離した。


「何だアヤ、お前もしかして.......」

隣に立つ政宗が、反省して俯く私の顔を覗き込む。



「うん。赤ちゃん、出来たみたい」



「そうか、それはめでたい。信長様には良い験担ぎとなったな」

「うん、ありがとう」


「まぁ、俺としては、信長様の留守中にお前を口説き落とそうとしていたのが無しになって残念だがな」

相変わらずの顔の近さ。


「もう、政宗の冗談はいつも笑えないよ。私だから良いけど、あまり思ってもいない女子にするのはダメだよ」


信長様と言う大好きな人がいたって、政宗の顔や声はドキリとしてしまう。


「俺はいつだって本気だが、まぁいい、信長様がきっとお待ちだ。行って来い」


「俺が連れて行く。アヤ、行くよ」

「う、うん」

政宗に背中を押され、家康に手を引かれて信長様の所へと急ぐ。

私は、どんな時もこんなにも素敵な仲間達に支えられている。幸せ者だ。




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