第62章 旅立ちの日〜最終章〜
中国攻めへ出発する日が明日へと迫った。
城中に緊張が走っていて、そこかしらでバタバタと忙しそうな人の姿が見受けられる。
今回、遠征へと向かうのは、信長様と光秀さんと秀吉さんと三成くん。
政宗と家康は自身の領地に目を光らせつつ、この安土を守る。いくら休戦中とは言え、武田、上杉がいつ攻めてくるか分からないからだ。
中国攻めに必要な拠点を攻め落とし、ある程度の目処が立てば、信長様と光秀さんは安土に戻り、暫くは、秀吉さんを総大将に、三成くんが軍師となって周辺の大名達と連携を取りながら戦を仕掛けて行くらしい。
西日本を巻き込む大きな戦である事には違いなく、多くの犠牲が出るのかと思うと胸がギリギリと締め付けられた。
心配なのは、葵の事。
大仕事を任され、これから長期間離れる秀吉さんの事が心配で堪らないはずなのに、気丈に振る舞っている。
今も、葵と一緒に、皆が使う甲冑を綺麗に拭く作業をしている。
一着、一着に無事で戻りますようにと願いを込めて.....
「......昨日、秀吉様と神社へ戦の勝利と無事を祈願しに行ったの」
「......うん」
最後の一着、葵は秀吉さんの甲冑を、私は信長様の甲冑を磨き始めた時、葵が話し始めた。
「そこでね、戦から戻ったら一緒になってほしいって言われて.......」
「えっ、一緒って.....秀吉さんの奥様になるって事?」
それって、プロポーズされたって事だよね。
コクンと、頬を染めて葵は頷いた。
「き、きゃー、おめでとう、葵おめでとう!」
嬉しくて、甲冑を磨く手を止め葵に抱きついた。
この日が早く来て欲しいとずっと願っていたから嬉しい。嬉しい。本当に嬉しい!