第1章 宣戦布告
いつも、行為が終わった後は、速やかに身を整え天主を後にする。
こんな空間には1秒たりともいたくないからだ。
まるで日課のように、身仕度を整えるため信長様の褥から起きようとすると、
「今宵はここにいろ」
髪を引っ張られて褥にまた寝かされた。
「信長様?」
「貴様は温かい。今宵は俺を暖めろ」
抱きしめられ、その胸元に顔を埋める形となった。
(えっ。なにこれ)
思いがけない温かさが降り注ぎ戸惑っていると、
「ふっ、どうしたアヤ、何か言いたげだな」
意地悪そうに信長様が私を覗き込んだ。
「べっ、別に何でもありません!」
ドクンっと心臓が跳ねた。
(えっ、何だろうこの気持ち)
「貴様は俺のものだ。その頑な態度も、少しづつ崩して行くのも一興だ」
無機質な目に少しだけ熱が宿ったように見えたけど、そんな事はどうでもいい。
「わっ、私は負けません!体は屈しても、心は屈しませんから。
信長様の思い通りにはなりません!」
信長様の腕の中から、信長様を睨みつけ、精一杯の言葉を投げつける。
「面白い。その賭けのってやろう。」
信長様はニヤリと口の端を上げて笑った。
私を抱く腕の力は緩まる事はなく、私はその夜、初めて信長様の腕の中で一夜を過ごした。
そして、これから私を待ち受ける運命を知らず、私と信長様との賭けは始まった。