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恋に落ちて 〜織田信長〜

第59章 奥の務め



春先からの戦仕度に向け、城内は忙しなく時間が流れていた。


暖冬という事もあり、戦は予定よりも早まりそうな気配らしい。


武具の確認から兵糧の確認はもちろんの事、兵の鍛錬や作戦会議など、する事は山積みで..........
私達針子も、寝袋のほつれを直したり、手拭いや風呂敷の増産を行うなど、戦仕度を手伝っていた。


戦が早まるという事は、信長様が安土を出発する日が早まるという事で.........
あと一月程の間に、一緒に戦に行く了承を、武将達から貰わないといけないという事実に私も内心焦っていた。


試しに一度、秀吉さんに聞いた時は..........

「............は?中国攻めについて行きたい?信長様は良いと言ったのか?」

「ううん、秀吉さん達皆んなが良いって言わないとダメだって」

「だろうな、はっきり言っておく、だめだ」

............即座にだめだと言われてしまった。


それでも、何か突破口があるのではないかと、他の武将達にも聞いてみたけど、家康と三成君は、大方秀吉さんと同じ感じで、自由主義の政宗と、色々意地悪は言うけど、最後は意見を尊重してくれる光秀さんでさえ、今回はだめだと言われてしまった。


だめだと言われる理由は自分でも分かってるし、
何の戦力にもならないどころか、マイナス要素だという事も理解している。

でも、諦めきれない。

だから、頼みの綱であるカルチャースクールでは、ここ最近は護身術や薙刀などの武術を中心に習っていて、それとは別に、葵からは乗馬を個別に教えてもらっていた。




「アヤ、顔色悪いけど大丈夫?」


湖の近くで兵の訓練をしている秀吉さん達に差し入れを届けるため、練習がてら、馬を走らせていると、葵が心配して聞いてくれた。


「あ、うん。大丈夫。ありがとう」


さすがにちょっと連日の特訓続きで疲れてはいたけど、信長様はもっと大変な事を毎日こなしてる。
それに、こんな体力では戦にはとてもじゃないけどついていけない。

怪我人の手当てと馬を乗りこなす。この最低限の事はできるようにならないと、誰も納得してくれない。


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