第54章 除夜の鐘
「ふっ、貴様の前だと、煩悩の数も108では足りぬな」
唇を離すと私を覗き込み、優しく頬を撫でられた。
「信長様と初めて新年を迎えられますね」
「昨年は、貴様は居なかったからな」
出会ってから一年と九ヶ月、だけど一緒に過ごしたのはまだ一年にも満たない。
それでも結婚して、離れてた一年を取り戻すように私達は時間を共にしている。
「今年は信長様の元に戻れて、信長様の妻にして頂けて、本当に幸せでした。来年もずっと一緒にいられるように、頑張ります」
「来年も再来年も一緒だ。とりあえず、煩悩の数だけ貴様を今夜は味わうとする」
ニヤリと口が弧を描くと、ゆっくりと着物が開かれ、再び優しいキスが落とされた。
「煩悩の数だけって、朝になっちゃいますよ」
「ふっ、ならいつも通りだな」
「もうっ............無理です」
新年早々朝まで宣言されてしまったけど、信長様の腕の中で幸せを感じながら一年を終わり、新しい一年を始めることができるなんて、とても贅沢で幸せな事だ。
「愛してるアヤ」
「私も、愛してます。信長様」
目を閉じると、愛される時間が始まる。
耳にはまだ、除夜の鐘が聞こえてくるけど、信長様の手と唇に熱を与えられると、その音も次第に薄れていった。