第44章 自分の未来へ
「うー」
言いたい事も話したい事も沢山あるはずなのに。
私を抱える腕の温度や、手に触れる信長様の肌の感触が夢ではないと教えてくれて、言葉にならない。
「少し、太ったな」
なのに、感動をぶち壊すような言葉
なんて人なの!!!
恥ずかしくて、慌てて信長様の腕から降りて離れた。
そうだ、そうなの。
記憶、ほんのさっき戻ったからだけど、私この一年、ファストフードとかジャンクフード、パスタピザ、揚げ物、パンとかを狂ったように食べまくってたんだ。
かなり体重が減ってた事もあり、母も気にせず食べさせてくれていたけど、何であんなに油っこい物ばかり食べたかったのか、記憶と共に理解できた。この時代にはない食べ物に、無意識に飢えてたからだ。
だから、一年前より確かに太ってる!
「なんだ、気にしておるのか?抱き心地が良くなったと言っておるのに」
急に離れた私を見て、ニヤニヤする信長様。
「でも、太ったはひどいです。やっと会えたのに」
「こっちへ来い。べたべたに濡れておる上にその格好、先ずは着替えよ」
あっ、格好も......
なんか、バタバタして中々感動の再会とはいかないな。
あんなに会社のみんなには急に迷惑をかけたのに。
有希ちゃん、あれから大丈夫だったかな。
どうか早く忘れて、日常の生活に戻ってくれるといいな。
焦っていたとは言え、心無いやり取りをしてしまったと、今更ながらに思ってしまう。
お母さんにも.....せめて手紙でも書けたのなら.....
「何を考えておる」
信長様は、急にふさぎ込んだ私を優しく抱きしめた。
「ちゃんと、みんなにお別れが言えなかったなって」
「貴様の帰る場所はもとよりここしかない。誰も悲しみはせん」
久しぶりなオレ様な態度
でも、
「っ、だから、今度こそ本当に離さないでください。私は、信長様に起こしてもらえないと、朝も起きられないんです」
「分かっておる。貴様をもう危険な目にはあわせぬし、離さん」
「約束ですよ」
「約束だ。とりあえず、寄越せ」
焦れた声で私の顎をすくい上げるとそのまま唇が重なった。
一年ぶりに触れる唇は、優しくて甘かったけど、寒さでくしゃみを堪えられず、唇を離してくしゃみをすると、「貴様はやはり飽きんな」と信長様は苦笑しながらもぎゅっと抱きしめてくれた。