第38章 当たり前の日々
いつも通りの朝。
「アヤ、朝だ。起きろ」
大好きな人が私を起こしてくれる。
「ん......」
身動ぎたいけど、逞しい腕に捕らえられてそれは阻まれる。
「朝餉の時間だ」
ちゅっ、とおでこに優しいキスがされ、私は目を開ける。
優しい瞳で私を見つめてくれる信長様。
「信長様、おはようございます」
「やっと起きたか」
顔が近づき触れるだけのキスが唇に落とされる。
幸せ。
素早く身支度を整えると、襖近くで待っていてくれた信長様が手を伸ばす。
その手を取って指を絡めるように手を繋ぐ。
これが、毎朝の私達のルーティン。
広間へ向かい、みんなと一緒に朝餉を済ました後は、それぞれの仕事へと向かう。
「では信長様、お仕事気をつけて下さいね」
広間を出て信長様に行ってらっしゃいを伝え、針子部屋の方へと体を向ける。
「アヤ」
軽く腕を掴まれ振り返ると、
ちゅっ、とされるキス。
これもいつもの日課(ほんと周りのみんなごめんなさい)
「今宵は夕餉を天主に運ばせる。貴様もはやく戻ってこい」
艶のある声が耳元でいたずら気味に囁く。
「........っ、はい」
これは、今宵は寝かせてもらえない事を暗示していて、朝からもう胸が跳ねて痛い。
赤くなった私の顔の輪郭を長い指でなぞると、ふっと笑いながら信長様は歩いて行ってしまった。