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恋に落ちて 〜織田信長〜

第37章 都合のいい女



「ふっ、ん、んんっ」

ほら、怒ってた事が嘘のように、もう何も考えられなくなってく。

ちゅっ、と音を立て私の唇を啄ばむように信長様が口を離せば、銀糸が伸びて更に私の思考を麻痺させる。

「っ、信長様はずるい」

「ふっ、ズルくなければ貴様は手に入らん」

都合の良い女だと?一体どこからそんな発想が出てくるのか。
この手に抱く以外、何一つ俺の思い通りにならない女。
貴様を手に入れるのに、どれだけ苦労したと思っているのか。
針子部屋から貴様の返事がないと女中から聞き、どれほど心が騒いで慌てて駆けつけたかなど、貴様は知らんのだろう。

「都合の良い女だと思うのなら、都合のいい女らしく、その身を俺に捧げろ」

「っ、やっ、待って信長様っ、ここ針子部屋っ、んんっ」

再び口を塞がれると、熱い手が着物の中に入って来た。
ブラやショーツもないこの時代、手を入れられれば胸も下半身も直に簡単に触れられてしまう。


「元は貴様の部屋だ」

そう、私の部屋だった。
あれはいつだったか、戦から戻った信長様に恐怖を覚えながらも抱かれた事を思い出した。
なぜあんなにも怖いと思ったのか、あの時も今も、信長様はこんなにも温かいのに。

「あっん、信長様」

身体は正直に、触れられる喜びを信長様に伝えてしまう。

「やっと大人しくなったな、本当に手のかかる奴だ」

いつの間にか着物は開かれ、露わになった胸に、信長様が顔を埋める。どれだけ肌を重ねようと、着物を暴かれ裸体を晒すのは恥ずかしくて慣れないし、信長様の艶っぽい顔にドキドキせずにはいられない。

「胸の音は相変わらずうるさいな」

くくっと笑いながら、私の体に痕を刻んでいく。

「あっ、っん」

与えられる熱に、結局また何も考えられなくなっていく。

好きになってしまったんだから仕方がない。

また、同じような事が起きたら、怒って睨みつけると思うけど、きっと信長様は笑ってごまかして私に口づけるにちがいない。そんな風にじゃれ合いながらいつまでも一緒にいたい。

あの頃より一部屋分広くなった針子部屋の中、針子たちの座布団を何個か拝借し、私たちは体を重ね合った。


今回の遊女屋の事が、まさか大きな事件に発展するなんて、その時の私はまだ知らず、ただただ、大好きな人の腕の中で、幸せなひと時を過ごした。

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