第35章 祭りの後
楽しい時間はあっという間で、まだまだ全然話し足りなかったけど、秀吉さんがお店に入ってきて「信長様がお待ちだ」と言うので、葵に「また明日ね」と伝えてお店を出た。
ただその時にふと、秀吉さんが葵に向かって「葵も帰るぞ、送ってく」と何気なく言った言葉。
あれっ?二人って知り合い?って思ったけど、深く考える前に、信長様の手が伸びて馬上に上げられ、体制が整う前に口づけられたから、周りで起こった歓声にまた恥ずかしさ一杯になって何も考えられなくなってしまった。
何だか、このままどんどん人前でも色々されたら今後どうしよう。と一抹の不安はあるけど、今回の事で、信長様の愛をいっぱい感じたし、みんなが心配してくれて、私は一人じゃないって事を実感できた。
ここが、私の帰る場所に、居てもいい場所になってる、よね?
これからもまだまだ試練は続くと思うし、きっとその度に私はどうしようもできない自分に遭遇すると思う。
でも、信長様の側は離れない。
これだけは、私が絶対に曲げないと決めている事。
何があっても離れない。
こんなに好きな人にはもう会えない。
これは、一生に一度の恋。
試練なんかに負けてられない。
片手に綱を持ち、もう片方の手で、私の手の指を絡めるように上から添えてくれた信長様の手をぎゅっと指に力を入れて絡め返す。
温かい
この手だけは絶対に離したくない。
これからどれ程の壁にぶち当たるのかは分からないけど、とりあえず一つの壁を乗り越えた私は少し強くなったと自分に言い聞かせて、今回の出来事を心の中に収めた。