第35章 祭りの後
そして今朝、朝餉を済ませた私と信長様は、秀吉さんにこっ酷く叱られ一緒に広間を出た。
繋いだ手は離さない。
見つめ合い、再び口づけを交わすと、広間から出てきた秀吉さんに見つかりまたもこっ酷く叱られた。
正直、五日間の記憶はあまりない。自分の身に起きた出来事の記憶はちゃんとあるし、あれは色々な意味で私の心に大きく刻まれた。
けど.....
思い出すのは、信長様の腕と胸と甘い囁き。
あんなに抱き合ったなんてほんと、正気じゃなかったとはいえ、朝も昼も、そんな明るい時間に何度も、何度も?そこも記憶が曖昧だけど、恥ずかしすぎるっ!
チラッと横を見ると、着崩した着物から逞しい胸を覗かせた信長様の姿が。
わぁっ!むりむりむりっ!
正気だったら絶対むりっ!
本当に恥ずかしいっ!
「どうしたアヤ」
一人悶える私の顔を信長様が覗き込む。
「なっ、何でもありません」
恥ずかしくて目を見れず逸らしてしまう。
「顔が真っ赤だな」
ツーっと信長様の指が頬を撫でる
(わーん、こんな時でも赤くなる顔を何とかしたいっ!)
慌てて顔を手で覆うと
「何を考えておる。言え」
その手を優しく掴み取って私を壁に押しやった。
「っ........分かってるくせに.....イジワル」
もう半分涙目だ。
「貴様は本当に飽きんな」
楽しそうに笑う信長様の顔が近づいてくる。
ドキンドキンと胸はうるさい。
口づけられるのだと思い目を閉じて唇が重なるのを待つと、
「コホン、コホン!」
と大きな咳払いが聞こえてきた。