第34章 悲しみの先
そうだ
まだ、叔父達親族を懐柔せねばならん。
「貴様の心配には及ばん、俺はアヤ以外はありえんからな」
もうアヤ無しで俺はいられない。
それ以外も考えられん。
「アヤ」
民衆に囲まれるアヤの元へと行く。
「信長様」
アヤは顔を綻ばせる。
「皆の者、アヤはこの通り元気だ。城下で無茶をせぬよう、これからもアヤを見張ってやってほしい」
集まった民衆に声を掛けると、どっと笑いが起こり、アヤは顔を赤らめた。
「アヤ様おっちょこちょいだからなぁ」
「そうそう、よく転んでますよね」
「信長様も心配が尽きず大変ですね」
「そうなのだ、中々言う事を聞かず手を焼いておる」
「信長様っ!みんなの前でひどい」
怒るアヤを腕の中にすっぽりと収めると、恥ずかしいのかジタバタと腕の中で顔を赤らめながら抵抗をしだした。
「でも、アヤ様が元気で安心しました」
「アヤ様が可愛いからって夜寝かせないのはダメですよ」
「たまにはアヤ様を休ませてあげてくださいね」
笑いと共に様々な民衆の声が聞こえてくる。
「そうだな......善処する。アヤをもう少し寝かせてやらねばな」
腕の中でもがくアヤは、もう耳まで真っ赤だ。
民衆とこの様な会話、少し前の俺からは考えられない。
いつの間にか、貴様の甘っちょろさが俺にもうつったのかもしれん。
全て貴様の影響だ。
責任を、取ってもらおう。
「アヤ」
「えっ?」
周りは民衆、じじいもまだいる。
秀吉は、まぁいい。
真っ赤な顔のアヤの顎を掬い上げる。
「貴様を愛している」
そう言って俺は、皆の前でアヤに濃厚な口づけを落とした。
ワァーーーーーーーッ!!!!!!!
その日安土城は、今までにないほどの民衆の歓声が響き渡った。