第29章 一本
こうして俺はアヤから狙われる事になって、今に至る。
廊下を歩いていた俺を何かで狙ってきたアヤ
「貴様、その手に持っているのは何だ」
「これは、庭先で取ってきた猫じゃらし(エノコログサ)です」
「貴様、そんな物で俺から一本取れると思ったのか?」
「えっ、いえっあの、薙刀や木刀だともし当たってしまった時に痛いし、私には重くて持ち運ぶには不向きだったので、猫じゃらしだったら痛くないしいいかなと思って」
はにかみながら、指先で猫じゃらしをくるくると回す姿に思わず見惚れてしまう。
「ふっ、貴様にこの身を案じられるとは、俺もまだまだだな」
サラサラと艶やかになびく髪に指を入れ、アヤの頭を少し引き寄せてその唇を奪う。
「んっ...........っ」
初めて会った頃に比べると上手くなったが、未だに恥じらい、顔を赤らめながらたどたどしく俺の舌の動きに合わせるアヤが愛おしくてならない。
「ふっ......ん.....誰かに.....見られて......っん」
こんな事、この城の中では日常茶飯事となっているのに、まだアヤは慣れる事がなく、恥ずかしがっている。
「貴様が俺の物だと見せつけてやればいい」
口づけを止める気のない俺は、いつものセリフを吐いて、更に深くアヤの呼吸を奪う。
「だっ.....め....ん.......のぶな........っん」
体の力が抜け始め、俺の胸になだれ込むアヤ
(仕方ない、離してやる)
ちゅっと音を立て、絡まった唾液の糸を引きながら唇を離した。