第27章 優しい嘘
先の戦から、数日が過ぎた。
カルチャースクールが無事終わり、葵と二人で針子部屋の縁側に腰掛けて話をしていると、
「アヤ、ちょっといいかな?」
襖越しに誰かが声を掛けてきた。
葵と誰だろうと顔を見合わせながら、襖を開けに行くと、椿姫と一人の女性が立っていた。
「椿?どうしたの?忘れ物?」
椿は、先の戦で敵方に姉上が側室に嫁いだと話していた姫だ。
「違うの。ちょっと、話があって、入ってもいい?」
真剣な顔の椿。
「あっ、うん。どうぞ」
神妙な面持ちな椿とその横の女性が気になって、部屋に入ってもらい、座布団を用意した。
皆で座布団に座ると、椿が口を開いた。
「話があるのは、私の姉です」
椿と一緒に入ってきた女性を姉だと紹介された。
姉という事は、先の戦で助け出された姉上かなと思った。
「あっ、アヤです。椿にはいつも色々と教えてもらってます」
軽く挨拶をすると、椿の姉上は突然深く頭を下げた。
「アヤ様にお願いがあります。先の戦で謀反を起こした私の夫の命を助けて頂きたいのです」