第2章 棘
気がつくと、外は既に暗くなっていて、私は信長様の腕の中にいた。
私を抱きしめながら信長様は眠っている。
側から見たら、恋人同士に見えるんだろうか。
私の事を愛してないくせに、体だけの関係なのに、何で私を抱きしめて眠るの?
いつか、私に抱き飽きたら処罰を下すように捨てるくせに。
信長様への最後の抵抗を奪われ、私にはもう、何も残ってない。
悔しくて涙が溢れてきた。
信長様に気づかれないよう、起こさないように、声を殺して泣いていると、
「また、泣いておるのか」
頭の上から、信長様の声がした。
「っ........」
悔しさや、悲しさや、色んな感情を抱えて信長様を睨む。
「睨むか、泣くかどちらかにせよ」
「うーーっ」
感情がごちゃごちゃで言葉が出ない。
悔しくて信長様の胸を思いっきりドンドンと叩く。
「ふんっ、貴様の拳など痛くも痒くもないわ」
そう言って、私の両手首を掴むと、
「アヤ、泣くのは構わんが、今後は俺の前だけにせよ」
睨むでも、怒るでもなく、言い聞かせるような目で告げられた。
「えっ」
「貴様の涙は男を惑わす。決して、他の奴等に見せるでない」
言ってる意味は分からなかったけど、今朝、手当てをしてくれてた時に言っていた、『かまわん。奴等の前であのような姿を見せた罰だ』の意味はこれだったのかと、やっと分かった。
「は.......い」
みっともないから泣くなって事だよね。
一瞬、もしかして.....と違う気持ちがよぎったけど、私はその気持ちには気付かないふりをして、今夜もまた、信長様の腕の中で夜を過ごした。