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恋に落ちて 〜織田信長〜

第23章 満月の夜



『アヤ、何時だと思ってるの?』

(んっ、誰?)

『今日から仕事でしょ?初日から遅刻する気?』

(お母さん?)

『アヤ早く起きてご飯食べなさい。久しぶりに顔見にきたら、やっぱり朝に弱いのね。本当にこれでちゃんと一人暮らし出来てるの?』

(お母さん、心配要らないよ。私今、信長様に起こしてもらってるから)

『信長様って、織田信長?何朝から寝ぼけてるの?漫画読みすぎじゃないの?』

(ほんとだよ。私、信長様と一緒に暮らしてるの)

『一緒にって、信長って名前の男の人と同棲してるって事!そんな事、お母さん許しませんよ』

(何で、お母さん。私幸せだよ。待って、行かないで、お母さん)

「お母さんっ!」

懐かしい母の夢を見て目が覚めた。

「.........っぁ」

急いで周りを見渡すと、安土城の天主だった。

「夢........か」

横を見ると、大好きな人が眠っている。

起こさないようにそっとその腕から出て、廻縁に出る。

ここに来て早半年。色々あったけど、信長様と恋仲になって、私はここで生きて行く覚悟を決めた。幸せだし、寂しくはない。でも、何故か時折見る家族の夢。こういう時、やっぱり家族の事を思い出して切なくなる。突然いなくなった私を今でも必死に探してくれているんだろうか。私は元気だと伝えたくても、生きている時空がもう違ってしまった。


「眠れんのか」
ふわりと包む様に信長様が後ろから抱きしめてくれる。

「信長様。起こしてしまってごめんなさい」
巻きつけられた信長様の腕に頬を寄せる。

「構わん。貴様とこうして月を見るのも一興だ」

「母の夢を、久しぶりに見ました」

「今更帰りたいと言っても帰してはやれんぞ」
抱きしめる腕に、少し力がこもる。

「ふふっ、信長様が浮気をしない限りは帰りませんよ」

「ふんっ、貴様言う様になったな。初めて会った頃は、声にならない程に怯えておったと言うのに」

口の端を上げて笑いながら、信長様は私の顔を覗き込む様に軽く口づける。

「本当に、信長様の口づけでこんなに幸せな気持ちになれる日が来るとは、あの時の私は思いもしませんでした」

そう、まだ出会ったばかりの頃、貴方は恐怖でしかなかった...............


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