第2章 棘
信長様にとって、口と口を重ねる行為は、愛するものに贈るキスではなく、手に入れた玩具を征服するための手段だ。
抵抗する力を奪い、我が物とせんが為の手段。
分かっているのに、今日は何故かその心ないキスに胸が痛む。
「アヤ、今朝の約束を果たしてもらおうか」
「えっ?」
肩で息をしながら、辛うじて答える。
「処罰を取り消した代わりに、何でもすると言ったであろう」
「何を、させる気ですか?」
「簡単だ。俺が欲しいと、貴様の口で強請ってみよ」
ニヤリと、口の端を上げて私を見下ろしながら、私の口を指でなぞる。
「っ.........それは、」
目を見開いて信長様を見る。
どんなに体が信長様を欲したとしても、心は屈しないと誓った私の最後の意地。
『欲しい』と口にしてしまえば、私にはもう抗うものが何も残らない。
「どうした。言えぬなら処罰するだけだが」
信長様は、私の唇をぷにぷにと押しながら、意地悪く笑っている。
「そっ、それはやめて下さい」
どうしていいのか分からず、しばらく考え込んでいると、
「言いづらいなら、言いやすくしてやろう」
そう言うと、耳にかぶりつき、舌で遊びはじめた。