第20章 交換条件
「何の話だ。俺はただ、シンと寝たかっただけだと言っただろう」
頭を撫でられあやされる。ここ数日感じていた手と同じだ。
「信長様、私、たくさん困らせてごめんなさい」
「貴様が手がかかるのはいつもの事だ」
抱きしめられ、おでこに口づけられる。
「少し準備に時間がかかったが、城下の一部の警備を強化した。限られた場所なら、明日から外出しても構わん」
「ホントですか?」
思いがけない言葉をもらい、声が弾む。
「条件は、天主に戻ってくる事だ。反論は許さん」
「もちろんです。嬉しい。ありがとうございます」
嬉しくて、信長様の胸に頬を擦り付けて嬉しい気持ち表現すると、信長様の手で顔を上げられた。
「アヤ、触れられれば平気でいられなくなるのは俺も同じだ」
熱い瞳で見つめられた後、自然とお互いの顔が近づき、私たちは久しぶりに熱い口づけを交わした。
身体を絡ませて見つめ合うたび、何度も唇を合わせ探り合う。
「んっ......」
チロチロと舌先で遊ばれ絡め取られる。
「んっ、ふぅ」
水音と熱い信長様の息遣いに蕩けそうになっていると、信長様の手が袷の中に入って来た。
「あっ、待って信長様」
「待つ必要はない」
更に袷を開こうとした途端、
「わんっ!」
シンがシッポを振って私たちを見ていた。
「そうか、此奴の部屋だったな」
袷から手を抜いてシッポを振るシンを見る。
「これ以上は、シンに見せられないですよね」
体の疼きを持て余しながらも、僅かな理性で伝えると、
「そうだな。犬とは言え、貴様の声や姿を見せる訳にはいかん」
信長様もシンを見て手を止める。
「では帰るぞ」
ガバッと身体を起こし、私を抱き抱えて立ち上がった。
「わっ、信長様っ、私も自分で歩けます」
慌ててジタバタするけど、
「夜はもう始まっておる。貴様はそのまま抱かれていろ」
艶のある声で耳元で囁かれ、抱えるその手に力が込められた。
「..........っ」
身体中に信長様の熱を感じながら、私は信長様の首に手を回しそのまま天主へと連れていかれた。
その後、天主に久しぶりに戻った私たちは、一緒にいなかった時間を埋めるように、二人っきりの濃厚で甘い夜を過ごした。