第16章 安土の休日②〜散歩編〜
「すご〜いシン、良く出来ました」
頭を撫でながら、シンにまた干し芋をあげる。
「なるほどな」
納得したように信長様が呟く。
「貴様にも早い時期にこうすれば、少しは大人しくなったであろうな」
意地悪な笑顔が覗く。
「わっ、私はそう簡単に躾られませんよ」
「やってみなければ分からん」
「アヤ、手を貸せ」
信長様に差し出された手を握る。
「アヤ、こっちを見ろ」
顔を上げて信長様を見つめる。
「良く出来たな、褒美だ」
そう言って、口付けられた。
「っん、」
「なんだ、簡単だな」
直ぐに唇を離して信長様が笑った。
「もうっ、ほんっといじわる」
ポカっと信長様の胸を叩いてその胸に顔を埋める。
初めてこの城下町のデートをした時、信長様の事を好きだけど、何も手に掴めないような不安ばかりがあった。でも今は、信長様と一緒にいられることが幸せで、この人の腕の中が心地良くて、どんどん好きな気持ちが大きくなって、欲張りな自分にびっくりする。
「ご褒美なんかなくても、私は信長様のそばにいたい。ずっといたいんです」
こんなにあなたを好きになるなんて思わなかった。
「アヤ、貴様の最大の弱点はその物覚えの悪さだな」
「えっ?」
私を胸から離して、信長様が熱のこもった目でみつめてくる。
「貴様は俺のものだ。何があっても絶対離さん。いいかげん覚えろ」
「は....い」
コクンと頷くと、
「良く出来たな。褒美をやる」
信長様の顔が近づいて、優しいご褒美(口づけ)が貰えた。
ドキンドキンと、耳に心臓があるんじゃないかと思うくらいに煩く高鳴る。
舌先で遊ばれ、目頭が涙で濡れ始めた頃、信長様の唇が離れた。
「そろそろ帰るぞ」
「もう?」
もう少しこうしていたかったけど。
「昼は終わりだ。後は、俺の時間だったな」
ニヤッと口の端を上げて信長様が笑う。
「えっ?」
「城に帰ったら、先ずは湯浴みだな」
活き活きとした目で告げられる。
この後、長くて濃ーい夜が始まるけど、それはまた次の話。
久しぶりの私達のデートはこうして穏やかに過ぎて、二人寄り添って、手を繋いで城へと戻った。
(シンも一緒)