第4章 🐾3
降谷零Side
ジン「あのお方が何を恐れて交渉という手段をとったかは知らねぇが、今回の相手のことで少し危ない話がある。なんでも、その組織の一員を傷つけたり、規律を乱すようなことをすれば後か方もなく殺されるらしい。」
「らしい?」
ジン「これは噂だからな。傷つけた奴は頭部はかみ砕かれ、原形をとどめないほどにバラバラになり、その犯行は人間とは思えないもので、なんでも大きな犬に噛まれたような傷だとよ。」
大きな犬…。
まさかいつか出会ったあの狼が今回の組織に関りが?
いや、あの家の周辺を調べたが、大きな犬を飼っているような痕跡はなかった。仮にあったとしてもそんな大きな犬を飼うには国の許可が必要だ。ましてやあの狼ほどの大きさになるものなら。もちろんそのことについても調べたが、一切何も出てこなかった。
ジン「まぁ、そんなでけぇ犬、こんな国にはいないがな。」
いや、いる。あの狼と関係があるかわからないが、あの組織は過去に大きな犬を飼っていた。そしてある日を境に姿を見せなくなった。
普通ならば主人と共に旅立ったと考えるのが自然だろうが、その亡くなった日の次の日にあの頭と呼ばれた男が出てきた…。何か関係があるはず。
まさか狼が人間になれるとは思わないが、何かしらのトリックがあるに違いない。
「もしそんな大きな犬がいて、人間になれるとしたらジンはどう思います?」
自分ながら論理的ではないことを言ったなと思いながらチラリと横目でジンを見る。
ジンはついに頭がイカれたかというような目で俺を見ていたがフンと目をそらして煙草をふかす。
ジン「いたら組織に誘うところだな。」
ジンんはニヒルな笑みを浮かべる。
あぁ、ジンは半分本気だ。ジンがあの組織と狼の関りを知る前に俺があの組織を俺の手で執行しなければ。
あの組織が黒だとわかったからには公安としての俺が許さない。
ジン「気持ち悪い笑みを浮かべるな。酒がまずくなる。」
「あぁ、すいません。これからの仕事が楽しくなりそうなもので。」
俺はこれから起きる事を楽しみにしながら酒を煽った。